⑥揖保川
セルロイドの生産に最適な揖保川の水質
セルロイド工場の立地条件の中で最も重要なのは水である。セルロイドの原料である原紙と硝化綿の製造には、大量の水が必要であり、水質の化学的清純度が製品の品質を左右した。その結果、揖保川、千種川、加古川、市川が候補に残り、最終的に消費地への交通の便が考慮され、河口の網干が工場地として選ばれた。水源は穴粟群の森林地帯から供給され、下流地方一帯も湧水が多く出ることで知られ、良質な水が大量確保できた。
網干地方写真館には創立記念日について、「セルロイド人造絹糸企業の第一条件であると聴く水質の優良、それをわれらの故郷が揖保川という太古よりの清れつな流れを有し・・・」と記載されている。
当初の取水口は、余子浜に水源地を設けていたが、砂利採取により河床が低下して、海水が逆流しだしたため、純良水の確保が困難となり、昭和3(1928)年には、さらに上流の上余部に水源地を設けた。