④広東
世界最大の生糸の輸出国の時代、生糸の積出港として栄えた
中国南部・広東省の省都「広州」は、古くから華南の最大の貿易港 として栄えた。旧称として"広東"とも呼ばれた。
江蘇省・蘇州や浙江省は養蚕業、絹織物業が盛んで、19世紀の清代には、中国は世界最大の生糸の輸出国であったことから、広州(広東)は、生糸の輸出港として賑わった。
鈴木商店広東出張所は、鈴木商店本店が海岸通りに移転した大正9(1920)年直後開設したと推測される。
大正10(1921)年、広東出張所に異色の商社マンが赴任した。横浜生糸検査所の生糸検査官から転身して鈴木商店に入社した吉田豊次は、中国から日本向けに輸出される生糸の検査官としての任務に就いた。
中国でも日本と同様、公営の生糸検査所を広東や上海に開設したが、いずれも活用されず全く機能することなく広東検査所は閉鎖されてしまった。中国からの生糸を輸入する業者は、独自の検査官、検査設備を現地に設けるのが一般的で、吉田のようなプロの検査官が必要とされていた。