羽幌本坑の選炭工場・貯炭場(ホッパー)
当時の最先端技術を結集した施設
選炭工場は地中から揚げられた石炭に混じる不純物(ズリ)を取り除き、品質別に選別する工場である。貯炭場(ホッパー)は貨車に石炭を積み込み、出荷する施設である。
羽幌本坑の選炭工場・貯炭場は運搬立坑と同様、羽幌鉱業所(羽幌本坑と上羽幌坑を管轄)を中心とする昭和35(1960)年からの合理化5カ年計画の一環として3億7,000万円を投じ着工。昭和37(1962)年の夏に完成。いずれも当時の最先端技術を結集した施設であった。
コンクリート造りの4階建。一見選炭工場とは見えない近代的ビルで、敷地面積に余裕がないため内部の機械配置にも無駄がなく配置されていた。
原炭ポケット(採掘された石炭を選炭されるまで保管しておく施設)の容量は1,200㌧。全水洗方式として毎時200㌧の処理能力があり、貯炭場の精炭ポケット(選炭された石炭を保管しておく施設)は1,600㌧(昭和40年に3,000㌧に増強)の容量を持ち、精炭ポケットの下には名羽線につながる貨車積みの設備を備えていた。
新選炭工場の特徴は次の通りであった。
(1)選炭設備をタカブジグ式にしたこと。高桑健によって考案されたタカブジグ式は、空気の力で水を波立たせることにより比重別に選炭する方式であるが、この方式による設備では当時日本最大級であった。
(2)全機械の運転を一ヵ所で行なえるコンピューターによる中央統一自動制御方式を採用したこと。
(3)原炭ベルト等に石炭の秤量計を取り付け、ベルト上を流れる石炭量を自動的に記録し、検炭業務を不要にしたこと。
(4)中央統御室から石炭の流れ具合を監視するため、工業用テレビジョンを取り付けたこと。
この選炭工場と貯場(ホッパー)は運搬立坑とともに、羽幌炭砿が昭和45(1970)年11月に閉山を迎えるまで羽幌本坑の心臓部として稼働した。