㉑ 苅藻島

日本最大の運河・兵庫運河開削工事で埋立られた人工島は、良好な釣り場としても知られる

明治期に入り神戸の貿易の中心が兵庫港から神戸港へ移ると、兵庫周辺の経済活性化を図るため運河の建設が始まった。風波が高く古来より船舶の航行に支障を来していたため、和田岬を迂回するバイパスとして5つの運河が建設された。明治8(1875)年の新川運河の開削から明治32(1899)年兵庫運河の開通まで完成した5つの運河を総称して「兵庫運河」と呼ばれる。全長6,470mの日本最大の運河で須磨と兵庫港が結ばれる。

神戸長田区沖の苅藻島(かるもじま)は、この運河工事で排出された土砂により埋め立てて造成された人工島で、現在では上級者釣り人に人気の釣り場としても知られている。島内には船舶修理工場、神戸市営リサイクリングセンター、運輸倉庫、食品物流センター、木材協同組合、生コン工場など多様な企業数十社が進出している。

鈴木商店も高畑誠一らの主導により同島内に用地を確保していた。我が国に硬化油の技術が確立されていない明治後期、鈴木商店は北海道で集荷した魚油(鰯)を苅藻島に輸送し、直火の釜で加熱し酸性白土を加え脱色し、臭いとオリを除き精製油として欧州に輸出していた。

鈴木破綻後、太陽鉱工の加工処理用地として軍需用、建築用、保温材用としてのツンドラ板の事業化が計画されたが環境問題等から実用化されず、長く駐車場として転用されてきた。平成27(2015) 年2月より敷地の一部を「太陽鉱工苅藻発電所」としてソーラー発電事業(発電容量1メガワット)を推進している。

また高畑誠一の斡旋で鈴木商店OBの日高和一郎氏(日高洋行創業者)が、旧鈴木の用地の一部を買収して製鋼原料ビジネスを展開したほか、同じく鈴木商店OBが創設した製鋼原料商社・共栄株式会社が島内に処理センターを運営している。

  • 苅藻運河と苅藻島
  • 兵庫運河の歴史
  • 太陽鉱工苅藻島発電所(太陽光発電事業)

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