①台北と鈴木商店
鈴木商店が台北に進出したのは領台直後の明治28(1895)年8月のことであった。しかし名義はあくまでも「小松組」であって、台北に鈴木商店の看板が出ることはなかった。明治32(1899)年には鈴木商店として台湾総督府より樟脳油の販売権を認められたが、その手続きは、後藤組(神戸・後藤廻漕店の台湾での事業所)の川合良男に一切を委ねていた。その後台湾での事業も活発になり、台北に拠点を必要とするようになって、大正2(1913)年ようやく出張所が設けられ、やがて支店となって、台湾での事業の全権が集中するようになる。
台北に設立した事業所としては台湾炭業、台湾鉄工所があるほか、大株主として影響力をもったものとして台湾土地建物、台湾瓦斯などがある。また財閥系商社と合同で設立した台湾精製樟脳もあった。鈴木商店台北支店は北門街七丁目にあり、台湾銀行本店とも近かった。