油脂
我が国の油脂硬化工業は、金子直吉の先見性から
わが国の油脂工業界に革新的な改革を行った鈴木商店は、魚油、大豆油の硬化の工業化を進めるべく、直営油脂工場の建設を始めた。
◆直営油脂工場
魚油硬化工場 〇兵庫工場(大正5(1916)年稼働)
大豆油硬化工場 ◎大連工場(大正4(1915)年買収)
◎清水工場(大正6(1917)年稼働)
◎鳴尾工場(大正7(1918)年稼働)
◎横浜工場(大正7(1918)年稼働)
〇保土ヶ谷工場(大正6(1917)年稼働)
〇王子工場(大正6(1917)年稼働)
(◎は豊年製油、○はスタンダード油脂へ)
◆豊年製油(現・J-オイルミルズ)
設立 大正11(1922)年
所在地(工場) 清水、鳴尾、横浜、大連
◆スタンダード油脂(合同油脂グリセリンを経て現・日油)
設立 大正10(1921)年
所在地(工場) 王子、兵庫、保土ヶ谷
◆合同油脂グリセリン (現・日油)
設立 昭和12(1937)年
所在地(本社) 東京
鈴木商店製油部直営工場のうち 鳴尾、清水、横浜の各工場は、わが国における抽出式大豆製油工業の基礎を築いた先端工場であった。この3工場は、大正11(1922)年に豊年製油として独立する。
株式会社J-オイルミルズ>J-オイルミルズのあゆみ>黎明期
※「鈴木商店 鳴尾工場便覧」(編集者 小宮小四郎)
平成元(1989)年、豊年製油は社名をホーネンコーポレーションに変更した後、平成14(2002)年に味の素製油と経営統合し、豊年味の素製油の持ち株会社の傘下となり、平成15(2003)年には吉原製油が加わり、持ち株会社名をJ-オイルミルズに変更し、傘下の豊年、味の素、吉原の事業会社はJ-オイルミルズに吸収合併された。
また、横浜・保土ヶ谷工場、東京・王子工場は鈴木商店の関東進出を実現した工場であった。王子工場は硬化油の他、脂肪酸、グリセリン、石鹸などの一貫生産を行うようになるが、大正10(1921)年、住田流芳舎・本郷工場と合併してスタンダード油脂(金子直吉の命名)が設立された。
翌年大正11(1922)年、スタンダード油脂は直営魚油硬化油工場の兵庫工場と大豆油硬化油工場の保土ヶ谷工場を併合し、油脂工業界に確たる地位を築いた。さらに大正12(1923)年に日本グリセリン工業と合併して合同油脂グリセリンとなり、その後昭和6(1931)年に合同油脂に改称する。
合同油脂は昭和12(1937)年に旧日産系の日本食糧工業、国産工業・不二塗料製造所、ベルベット石鹸と合併し、日本油脂(第一次)が誕生する。
この日本油脂は昭和20(1945)年に日本鉱業・化学部門と合併し、社名を日産化学工業に改称したが、昭和24(1949)年企業再建整備法により同社の事業の中から油脂、塗料、火薬、溶接部門を分離・継承して第二次日本油脂がスタートした。さらに平成19(2007)年、日油に社名変更した。