鈴木商店の商品シリーズ④「塩・ソーダの話」
化学工業の基礎を成す戦略的商品
塩化ナトリウムを主な成分とする「塩」は、海水の乾燥、岩塩の採掘によって生産される。我が国の年間の塩の消費量は、約900万トン(2008年度)ほどで、家庭用・食品加工用に約15%,一般工業用並びに畜産・融雪等に11%,残りの74%はソーダ工業用に使われている。
世界の塩生産量は、2.65億トン(2008年度)で上位5か国の生産量は第1位アメリカ(4,220万トン)、第2位 中国(2,890万トン)、第3位カナダ(1,229万トン)、第4位ドイツ(1,080万トン)、第5位インド(950万トン)と続き、日本は、20位で140万トン(自給率14%)だが、世界一の輸入国(760万トン)となっている。
我が国では、日露戦争の軍費調達を目的に明治38(1905)年に塩の専売制が実施され平成9(1997)年に廃止されるまでで永く専売制が敷かれてきた。かつては旧植民地だった台湾のほか関東州(中国・遼東半島)等の塩田よりの天日塩を輸入していたが、今日ではブラジル、メキシコ、豪州、中国、インド等からの工業塩を輸入している。
鈴木商店では、塩業については、東洋塩業(後の台湾塩業)を設立し、大日本塩業を傘下に収め、さらに大里、彦島に直営製塩工場を保有して再製塩まで手掛けたが、ソーダ事業については、太陽曹達を設立し、マガディ・ソーダ社の輸入販売に徹して国内でソーダ事業を興すことはなかった。(マガディは、マサイ族の言葉でソーダを意味する。マガディ社は、大正末期には競合会社のブラナモンド社(現・ICI)傘下に入ったが、現在ではインド・タタグループ企業となった。)
塩と電気を原料とするソーダ工業では、か性ソーダ、塩素、ソーダ灰を生成し、あらゆる工業分野に使われる原料・副原料となる基礎素材産業の一つである。