鈴木商店こぼれ話シリーズ㉓ 「高畑誠一を"カイザーのような男"と評した英海軍大臣・ウィンストン・チャーチル」
明治45(1912)年、高畑誠一は25歳の若さでロンドン支店長に抜擢され、以後15年間にわたるロンドンでの活躍が始まった。大正3(1914)年、欧州で勃発した第一次世界大戦で、各種物資が不足する欧州市場に対し、高畑は連合国に対して強気のビジネスを展開し、食料、鉄、船舶等を大量に供給した。「英国政府と云えども一介の客に過ぎぬ」と平然と言う高畑の交渉のタフぶりに英国の海軍大臣だったウィンストン・チャーチルが「カイザー(ドイツ皇帝のこと)を商人にしたような男」と評したと当時の新聞に報じられたという。(写真は海軍大臣時代のチャーチル(アスキヌ内閣時代))
第一次世界大戦中から第二次世界大戦、戦後の冷戦時代にかけての最も著名なイギリスの政治家の一人であるチャーチルは、第61代首相(1940年~1945年)、第63代首相(1951年~1955年)を務めた他、内務大臣、財務大臣、第4代保守党党首を歴任しているが、二度にわたって海軍大臣にも就任している。
アスキヌ内閣時代の1911年~1915年の3年半(チャーチル36歳~40歳)とチェンバレン内閣時代の1939年~1940年の約半年間(チャーチル64歳~65歳)の二度歴任しているが、高畑のロンドン駐在と重なるのは、アスキス内閣時代の海軍大臣当時であり、この時期の鈴木商店が如何に勢いがあったか容易に想像されよう。
ドイツとの建艦競争が激化する中、海軍大臣に就任したチャーチルは、第一次世界大戦時には海軍大臣、軍需大臣として戦争を指導した。しかしアントワープ防衛やガリポリ上陸作戦で惨敗を喫し、辞任した。だが、ロイド・ジョージ内閣で軍需大臣として再入閣を果たし、その後は輝かしい功績を残した。