松方コレクションと鈴木商店(その2)
松方幸次郎が収集した美術コレクションは、後に「松方コレクション」 と呼ばれたが、松方が買い集めた美術品は1万点(絵画、彫刻、工芸品、浮世絵など2,000点および一括購入した浮世絵8,000点)に及ぶと云われている。
鈴木商店ロンドン支店内の専用室を拠点に本業の傍ら、3度の長期滞在中に収集活動を行った。第1回は大正5(1916)から大正7(1918)の2年数か月間、第2回目は、大正10(1921)年から大正11(1922)年の約1年間でロンドンのほかパリ、ベルリンにまで足を延ばしている。さらに大正15(1926)年から昭和2(1927)の1年間にもコレクションを増やしている。
収集活動の初期、イギリス人画家・フランク・ブラングィンと知り合ったことから収集に拍車がかかった。ブラングィンは松方の美術コレクションのアドバイザーとなった。(「共楽美術館」の設計者)
第1回目の滞在中には、イギリス絵画を中心に1,000点以上を購入、フランスの宝石商の所蔵する浮世絵8,000点を一括購入したほか、リュクサンブール美術館館長レオンス・ベネディットの仲介でロダンの代表作を一括購入した。
第2回目の滞在時には、ゴーギャン(15,6枚)、セザンヌ(48枚)、クールベー(10枚)のほかモネとは直接交渉して「睡蓮」他を購入。さらにゴッホの「ファンゴッホの寝室」、ルノワールの「アルジェリア風のパリの女たち」などの名画を手に入れた。
松方が収集したコレクションのうち、第二次世界大戦後フランス政府に接収された428点のうち370点(絵画196点、素描80点、版画26点、彫刻63点、書籍5点)について昭和26(1951)年、フランス政府より寄贈返還された。しかし、ゴーギャン、ゴッホなど数点の作品は返還されなかった。
松方コレクションの国内に現存する多くは「国立西洋美術館」に所蔵されている。また一括購入した浮世絵8,000点については皇室へ献上された後、戦後「東京国立博物館」に移管されているほか、川崎造船所が経営破綻した際、担保として手放し競売を経て「ブリジストン美術館」、「大原美術館」に所蔵されているものもある。また、フランスに残されたコレクションは、「オルセー美術館」、「ルーヴル美術館」、「ポンピドゥー・センター国立近代美術館」に分散所蔵されている。(詳細については、関連トピックスご覧ください。)