経済野話(現代訳・抄訳)④「物価論」

1.物価を決定する生産費には資本と労力の要素に大別されるが、資本を形成するものは労力の蓄積であるから、資本を利用する対価としての資本利子の問題と考えられる。

物価の決定に金利の力がいかに大きな比重を占めているかが理解される。高い金利がすべての資本にかかっているから、物価問題と云うが、一面金利問題であることを理解すべきである。

2.わが国の機械工業において、英米諸国に比べて機械化が遅れているのは利子が高く、その結果機械代金の利子と原価償却を計算すると採算が合わないからである。

3.最近の金融政策では、金利の騰貴を配慮せず通貨の緊縮を計ったため、機械化が進まず、大量生産が行われない。その結果として物価はますます高くなるばかり。

4.事業が生産的か不生産的(非生産的)か否かは、利子、労賃その他の生産費の総計とその生産品の価格とのバランスに余剰があるかどうかによる。

言い換えれば、現代の経済組織においては利子の高低によって、事業が生産的か不生産的か決まるのである。金利が安ければ安いほど、国内の生産的事業は増加し、物価は安くなる。

5.わが国の金利水準が英米並みの3~4%程度なら、現在の不生産的事業もたちまち生産的事業となり、国内の経済組織の安定が得られる。しかるに現在のように数億の輸入超過は、外国労働の輸入超過ということで国内労働は過剰となり失業者が多く生じて経済界は不安となる。これこそ経済政策の失敗といわざるを得ない。

6.従来の為政者が物価調節の手段として通貨を緊縮し、金利を高くした結果、事業が衰退したのみならず、物価自体も必ずしも下落しないという点を認識しなければならない。物価を安くする根本問題は、「安い利息」という点である。

◎鈴木商店関連資料「経済野話」(原文・e-book)

関連資料

  • 大正期の卸売物価指数
  • 大恐慌前後の米国長期金利

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