「鈴木商店創業150年および鈴木商店記念館開設10周年の集い」(神戸)を開催しました。
2024.10.2.
本年、鈴木商店は創業から150年を数え、また「鈴木商店記念館」は平成26(2014)年4月1日の開設から10周年を迎えました。
この度、当記念館の更なる発展と鈴木商店の再評価を願い、令和6(2024)年7月19日(金)に開催した「鈴木商店創業150年および鈴木商店記念館開設10周年の集い」(東京)に続いて、鈴木商店創業の地・神戸に関西を中心とする関係者をお招きして「鈴木商店創業150年および鈴木商店記念館開設10周年の集い」(神戸)を開催しました。(左の写真は、会場の「エスタシオン・デ・神戸」)
【講演会の概要】
■日時: 令和6(2024)年9月27日(金) 17時~18時40分
■場所:「エスタシオン・デ・神戸」(ヴィーナスの間)(神戸市中央区弁天町2番8号)
■主催: 辰巳会 鈴木商店記念館
■参加者: 関西を中心とする当記念館の関係者、協賛企業の皆様、鈴木商店と関係の深い方々 約120名
■プログラム:・開会の辞 辰巳会 鈴木商店記念館代表 鈴木 一誠 (太陽鉱工株式会社 取締役会長)
・対 談 「神戸の『風景』を変えた鈴木商店記念館」
対談者: 神戸新聞社 論説委員 小林由佳
双日株式会社 広報・IR・サステナビリティ推進担当本部長席 小林 正幸
(鈴木商店記念館発起人、特別協力者)
・一般講演(1) 「鈴木商店記念館の歩み」
講師: 鈴木商店記念館 編集副委員長 金子 直三
・一般講演(2) 「幻の総合商社『鈴木商店』誕生」
講師: 鈴木商店記念館 編集委員長 小宮 由次
・一般講演(3) 「舞台『彼の男 十字路に身を置かんとす』の公演秘話」
講師: 劇団「LiveUpCapsules」主宰(脚本家・演出家) 村田 裕子
・閉会の辞 鈴木商店記念館 編集委員長 小宮 由次
・司会進行 鈴木商店記念館事務局 岩井 伸仁(太陽鉱工株式会社 総務部 部長)
【懇親会】
■日時: 同日 19時~21時
■場所: 「エスタシオン・デ・神戸」内「ジュピター・ネプチューンの間」
■参加者: 約120名
当日は関西を中心とする旧辰巳会の会員、鈴木商店の関係者・社員のご親族、協賛企業の皆様、編集協力者の皆様、鈴木商店ゆかりの方々、神戸市の関係者等多くの関係者にお集まりいただき、講演会は記念館事務局・岩井伸仁(左の写真)の司会により定刻通りに始まりました。
冒頭、鈴木商店記念館の代表 鈴木 一誠より開会のご挨拶を申し上げました。
<開会の辞>(鈴木商店記念館代表 鈴木 一誠)
鈴木商店は昭和2(1927)年に経営破綻したが、かつての鈴木商店の社員の方々が親睦をはかるため、昭和35(1960)年に高畑誠一氏を会長として「辰巳会」が設立された。
鈴木商店に関する資料、また鈴木商店への再評価の思いから平成26(2014)年4月1日、「鈴木商店記念館」が辰巳会内の組織としてウェブサイト上に開設され、現在までのアクセス数の累計は157万件余りとなり、サイト内の資料・情報も年々充実の度を増している。
鈴木商店は私の曾祖父、初代鈴木岩治郎が雇われていた辰巳屋 松原恒七商店の神戸出張所が出発点であり、150年前の明治7(1874)年に辰巳屋の暖簾分けを受け、当時の内海岸通四丁目、今日の栄町通4丁目に鈴木商店を創業した。なお、この創業の地に記念碑を作ってはどうかということを皆さんと考えて行きたいと思っている。
以上、鈴木商店のルーツおよび「鈴木商店記念館」開設の経緯を顧みるとともに、「総合商社鈴木商店」を広くご認識いただける「辰巳会 鈴木商店記念館」として引続きご支援を賜りたいとし、開会のご挨拶とされました。
<対談・講演の内容>
● 対談「神戸の『風景』を変えた鈴木商店記念館」(対談者: 小林 由佳、小林 正幸)
まず、"W小林" のお二人の出会いから神戸新聞社の「遥かな海路 巨大商社・鈴木商店が残したもの」の連載(2016年4月~2017年3月)に至る過程をお二人が説明されました。
記念館は神戸開港150年に合わせて「鈴木商店モニュメント」建立の計画とともに神戸市民に鈴木商店についてもっと知ってもらいたいとの強い思いが有り、神戸新聞社としても神戸の近代化を振り返る中においては鈴木商店について触れる必要があり渡りに船であった。
この連載(単行本になる)は記念館が全面的にバックアップしてくれたからこそ実現した。記念館の勢いに圧倒される形で取材を開始。同紙としては鈴木商店の歴史を知る前と後では神戸に対する見方・風景が変わった。岩治郎、よね、直吉、富士松の顔が見える歴史、大変な熱量を持った人たちが集まって近代化を引っ張って行った歴史である。
※以下、小林正幸氏を⦅正⦆、小林由佳氏を⦅由⦆と表記します。
⦅正⦆鈴木商店では個性豊かな型破りな人たち一人一人が輝いていた。これは鈴木よねの自由に任せるという風土から生まれたのではないか。財閥は組織で動いており人物伝というものは余り聞かない。
⦅由⦆記事を書く上で助かったのは登場人物のキャラが立っている・濃い、非常に個性が強い方々の集まりでドラマ性が高いこと。しかも世界各地でも活躍し、それが今に続いている。
⦅正⦆鈴木商店は個々人のドラマチックな物語の塊。鈴木商店が大好きという方が全国各地におられる。脚本家の村田裕子さんもその内のお一人。色々な人たちが鈴木商店に魅了されて近寄って来てくれる。これは"鈴木商店の魔力"と言って良いと思う。本日の参加者の皆さんもこの魔力によって集まってくれたのではないか。
⦅由⦆私が感銘を受けたのは鈴木よね。あの時代にあって、よねは女性が働くことを大事にし、女性を採用し、また教育を重視して神戸女子商業(現・神戸市立神港橘高校)に寄付し、女性の活躍を推進した。鈴木商店はダイバーシティの塊。色々な人を採用し、多様性を武器に競争力としたことは他の財閥とは異なる特色である。
⦅正⦆鈴木商店はダイバーシティのサンプル的存在。一人一人がお互いに認め合い、色々なタイプの人がお互いに化学反応し合っていた。組織というより個々人を輝かせるマネージメントというのは今日でも参考になるのではないか。
⦅由⦆鈴木商店は失敗に寛容。失敗を一旦受け止めて、もう一度チャンスを与えて育てていく風土があり、うらやましいと思う。
⦅正⦆減点主義だとどうしてもチャレンジすることを躊躇してしまう。そういった意味では鈴木商店は家族主義で和気あいあいとやっていたと思う。
⦅由⦆取材班が一点気を付けていたのが、鈴木にはプラスの側面とともにマイナスの側面もあったということ。出来るだけ客観的な目で、良い面も悪い面も書くことを心掛けた。正幸さんから見て鈴木商店としてもう少しこうだったら良かったのに、ということはありますか?
⦅正⦆鈴木商店物語の良い所は一旦経営破綻しているところ。破綻しているので、色々な教訓があぶり出された。ガバナンスの問題、資金調達の問題、米騒動の際の広報戦略も教訓になる。
⦅由⦆神戸市民は神戸港の果たした役割をあまり大事に思っていないのではないかということを取材を通して感じた。静岡県清水出身の正幸さんにお聞きします。関東から見て神戸の歴史はどのように映っていますか?
⦅正⦆神戸の方は神戸の鈴木商店を過小評価しており、もったいない。鈴木商店は清水に日本最大規模の搾油工場(後の豊年製油清水工場)を建設したが、その時の新聞記事「神戸の魔人、鈴木商店がやって来てみるみるうちに清水港を蘇らせた」からも地方から見て神戸はすごいという印象。神戸では米騒動の直ぐ後に川崎・三菱両造船所の争議(労働者と資本家の対決の一場面)が起こったが、日本の大きな歴史の流れの中に鈴木商店があったという認識であり、もったいない。
当時は神戸発の地方活性化、神戸発で世の中が変わっていったということが多々あった。もっと自信を持ってもらいたいという思いが強い。羽幌町、北九州市、内子町など神戸の鈴木商店によってわが町は育ったと思っている人が全国至るところにおられる。このことを大事にしていただき、自信を持って鈴木商店を観光資源化しようという動きがあってもよいのではないか。
⦅由⦆神戸の方は開放的でお洒落なイメージの神戸が大好きで、その点に誇りを持っていると思うが、日本の近代化の根っこの部分での存在感が大きく、色々な産業や教育などに熱い歴史があるということに誇りを持っている人はあまりいないと思われる。
⦅正⦆かつて神戸製鋼所は鈴木商店のR&Dセンターという形で実験が繰り返され、色々な機械が応用されていった。イノベーションの出発点が神戸にあった。
⦅由⦆神戸は元気がないというのが神戸に住んでいる私も含めて皆の認識である。神戸の元気のないところを鈴木商店、鈴木関係の企業が活気付ける、大きなきかっけになり得るものが沢山あるのではないか。3年後は神戸開港160年。鈴木代表からも次のモニュメントの話が出されたが、正幸さんはどんな夢を持っていますか?
⦅正⦆あくまでも個人的な野望として、神戸開港の出発点に鈴木商店がいたことをもっと伝えたい。かつ、"栄町通" というところがどのようなところだったのかを皆さんに知ってもらいたい。
モニュメントをもう一つ作りたいと思っているが、皆さんの理解が得られなければ意味がなくなるので、神戸新聞社、神戸市に盛り上げていただきたい。なお、膨大な情報をもっと伝えたいという気持ちがあり、マンガや講談による鈴木商店の物語を作り、皆さんに披露して行きたいと思っている。
⦅由⦆鈴木商店記念館のウェブサイトは情報の更新がとにかく頻繁である。広くて深くて濃い情報が満載なので是非ご覧いただきたい。鈴木商店記念館を支えていただいている方にもっと支援が必要。本日参加されている皆さんの更なるご支援が必要と思っており、神戸新聞社も報道等を通じて側面支援していこうと思っている。これからも記念館、神戸新聞をよろしくお願いします。
● 一般講演(1) 「鈴木商店記念館の歩み」(講師: 鈴木商店記念館 金子 直三)
これまでの記念館へのアクセス数、サイト内各ページの説明、ゆかりの各地の取材、全国各地での鈴木商店関連イベントの開催状況、神戸市主催の神戸開港記念事業、各講演会・勉強会・シンポジウム・鈴木ゆかりの地を巡るツアー等への協力、神戸新聞の連載「遥かな海路」への協力、「鈴木商店モニュメント」の建立、舞台「彼の男 十字路に身を置かんとす」への支援、鈴木商店にまつわる32のシリーズ、内現在公開中の3シリーズのご案内など平成26(2014)年4月の記念館の開設から今日に至るまでの10年間の歩みを中心にご紹介しました。
● 一般講演(2) 「幻の総合商社『鈴木商店』誕生」(講師: 鈴木商店記念館 小宮 由次)鈴木岩治郎の生い立ちとその家系、長崎・下関での菓子修行、辰巳屋 松原商店(店主・松原恒七)が神戸・弁天浜に神戸出張所を設けたが、ほどなく第二波止場(後・国産波止場)の角(後の"内海岸通四丁目")に店を移したこと、岩治郎は松原商店の神戸出張所に雇われ、後に宗家「辰巳屋」の暖簾を引き継ぎ、内海岸通四丁目(現・栄町通4丁目)に鈴木商店を創業したこと、この度、神戸倶楽部沿革誌、旧土地台帳、区画整理前の地図など諸資料を検証した結果、鈴木商店の創業地が現在の "栄町通4丁目" の特定の場所であることが判明したことなどをご紹介しました。
● 一般講演(3) 「舞台『彼の男 十字路に身を置かんとす』の公演秘話」(講師: 村田 裕子)
舞台「彼の男」は令和5(2023)年4月に東京で10公演、神戸で7公演再演させていただいた。当時はコロナ禍の最中で、コロナが蔓延する2月から舞台稽古を始めたが、舞台を完走することは賭けでもあった。
明治・大正時代の世界地図を参考に作成したパンチカーペット製の地図、舞台セットの作成や焼き打ちのシーンで使用する"大量の紙"を作る際の苦労話、焼き打ちの日から翌日の朝に至るまでの舞台セットを変化させるシミュレーション、亀井堂総本店から大量に「瓦せんべい」を差し入れていただいたこと、公演の前に追谷墓園の鈴木家他の墓を訪れたことなど公演の数々の裏話をご紹介いただきました。
最後に、舞台セットが出来上がるまでの映像をご覧いただきました。
<閉会の辞>(鈴木商店記念館 編集委員長 小宮 由次)
本日は「鈴木商店創業150年および鈴木商店記念館開設10周年の集い」に多くの皆様にご参加いただきまして大変ありがとうございます。鈴木商店に対する新たなご理解、再認識をいただけたならこの上ない幸いです。
この度明らかになった鈴木商店の創業地に新たな記念碑を建てたいとの希望・夢を持っています。皆様の変わらぬご支援をいただきたくよろしくお願いします。
鈴木商店については全貌が未だつかめておらず日々新たな発見がある。今後とも鈴木商店記念館を通じて新たな事実を発信してまいります。最後に、今後とも鈴木商店記念館に繰返しご来館、アクセスしていただくようお願いし、本日のご来場に対する感謝の意を述べて閉会のご挨拶としました。
<懇親会>
引続き、懇親会も記念館事務局・岩井伸仁の司会により始まり、当記念館の協賛企業・サッポロビールより参加者の皆様に手土産として缶ビールをご提供いただいたことが紹介された後、太陽鉱工株式会社代表取締役社長の鈴木 一史様よりご挨拶・乾杯のご発声をいただきました。
暫しご歓談の後、日本精化株式会社代表取締役執行役員社長の矢野 浩史様、高畑誠一の出身地である愛媛県内子町の町長 小野植 正久様のお二人よりご挨拶をいただきました。
記念館からは次の鈴木商店の関係者・社員のご親族の方をご紹介させていただきました。鈴木佳代子様・鈴木 雄太様・穐田 昌祺様・村田 美佐子様(鈴木岩治郎の兄・文治郎のご親族)、貴答 祥子様(金子直吉の曾孫様で、太陽鉱工の監査役を務めた金子文蔵のお孫様)、高畑 新一様(高畑誠一の曾孫様)川合 萌子様と高田 良介様(川合良男のご親族)、奥野 恵司様(山地孝二のご親族)、落合 滋様(落合豊一のご子息)、中村 裕様・中村 清次郎様(中村勇吉のご親族)、南 正和様(南 正一のご子息)、堀井 栄美子様(金光庸夫のご親族)、池田 泰雄様(池田 政雄のご子息)
続いて、「羽幌炭砿ファンクラブ」の菊地 瞳様と三浦 義之様よりご挨拶をいただきました。北海道羽幌町では、来年9月27日(土)に「羽幌炭砿閉山55年記念イベント」(羽幌炭砿三山大集会)が開催される予定です。
なお、懇親会の会場の舞台中央には「カネ辰の暖簾」が掲げられ、舞台の下手には鈴木商店の法被2枚(上の写真、右側の1枚は前記の川合良男が所有していたもので川合 萌子様から寄贈いただいたもの)が展示され、会場に彩を添えました。
鈴木岩治郎の兄・文治郎のご親族、穐田 昌祺様による"中締め" の後、懇親会はお開きになりましたが、参加者の皆様は鈴木商店という同じ傘の下、彼方此方で情報交換がなされ、また昔話に花を咲かせるなど次々に交流の輪が広がり、楽しく有意義なひと時となりました。