鈴木商店のユニークな規定シリーズ②「鈴木奨学金」をご紹介します。
2015.10.23.
大正11(1922)年3月13日制定された「鈴木学生貸費規則」は、企業による奨学金制度の始まりと云えます。昭和19(1944)年の日本育英会法による公的奨学金制度に先立つこと20余年前、鈴木商店による前途有望な学生を対象とする奨学金貸与制度でした。
本制度は、大正8(1919)年に制定されていた鈴木商店社員の子弟ならびに見習い社員に対する学費貸与制度を改訂して新設した制度でした。
この規則では、「鈴木家」が奨学金を貸費すると規定しており、貸費する対象者は高等学校、専門学校程度以上の学校に在学する学生とし、授業料および毎月交付金を貸費するとしています。「貸費願」、「誓約書」いずれも鈴木家宛てに提出されます。
鈴木商店の人材養成は、金子直吉の天性の気質によるところ大で、金子の自宅には絶えず書生を置いてその天分に応じて勉学させ家族同様の待遇をしたことからも信頼に基づくものでありました。書生の多くは東大、京大、神戸高商、東京高商、小樽高商、慶応、各高等学校、独逸協会(現・独協大)その他の私立大を卒業後、鈴木商店に入社し大活躍しています。こうした実績から鈴木学生奨学金が生まれたと云えます。
鈴木商店の人材育成の精神は、帝人にも見られます。昭和28(1953)年、帝人は創立35周年記念事業として「帝人久村奨学金」を創設し、今日までノーベル化学賞受賞者・根岸英一氏を含む1,500名に貸与しています。