鈴木商店研究家・齋藤尚文氏の著書「鈴木商店と台湾 -樟脳・砂糖をめぐる人と事業-」をご紹介します。
2017.4.5.
この度、鈴木商店記念館の協力者でもある兵庫県立芦屋高等学校教諭・兵庫教育大学大学院非常勤講師(博士[学術])の齋藤尚文氏が、鈴木商店が台湾においてどのような人材を活用し、またどのような事業を展開したかを実証的に描き出し、その歴史的意義を問うことを目的とした新刊「鈴木商店と台湾 -樟脳・砂糖をめぐる人と事業-」を刊行されました。
明治28(1895)年、鈴木商店は下関条約の締結により日本の領土となったばかりの台湾に進出すると、専売樟脳油の65%の販売権を獲得するという成果をあげ、その後も台湾での最大の事業となる製糖事業、さらには製塩事業にも進出するなど事業の多角化・資本の蓄積を進めました。一方で大番頭・金子直吉は台湾総督府民政長官・後藤新平との緊密な関係を築き、後藤の紹介による鈴木商店の台湾銀行との結びつきは、その後宿命のパートナーとも言うべき切っても切れない関係にまで進展していきます。
齋藤氏は序論において、本書について次のように述べています。
「鈴木商店をめぐる一般的および学術的な関心は、大戦景気にかけて矢継ぎ早に行われた企業の設立や買収、世界を股にかけた大がかりな商取引、昭和金融恐慌の引き金となった破綻とその顛末といったドラマチックなテーマに集中し、その前史であり、事業全体の基礎を作り上げた台湾での事業がいかに展開されたかについては、台湾進出という史実に表面的な言及がなされるだけで、ほとんど光があてられることはなかった。本書の着眼点はそこにある。」
本書は、鈴木商店の台湾における事業を齋藤氏の緻密・周到な調査に基づき、樟脳と砂糖に焦点を当てて分析しその実像に迫る力作であり、鈴木商店に興味をお持ちの方にとってはまさに必見の書と申せましょう。
■本書について
書 名: 鈴木商店と台湾 -樟脳・砂糖をめぐる人と事業-
<目 次>
・序 論
・第1章 台湾進出と小松組
・第2章 樟脳専売制度と製脳業
・第3章 粗製樟脳販売
・第4章 内地樟脳関連業
・第5章 後藤回漕店と台湾陸運業
・第6章 支店出張所の開設と製糖業
・第7章 製糖機械生産
・補 章 台湾専売塩販売
・結 論
著 者: 齋藤 尚文(兵庫県立芦屋高等学校教諭・兵庫教育大学大学院非常勤講師、博士[学術])
発行所: 株式会社晃洋書房
※京都市右京区西院北矢掛町7番地 TEL 075-312-0788 FAX 075-312-7447
発行日: 2017年3月30日
定 価: 4,800円(税別)