「神戸港と神戸文化の企画展」の記念講演会で、元NHK記者・元神戸大学非常勤講師の大塚 融氏が講演されました。

2017.11.13.

rogomaaku.PNG今年、当記念館は 神戸市主催の「神戸港と神戸文化の企画展」において、これまで5回の鈴木商店の研究者・関係者の皆様による講演会を実施してまいりましたが、いよいよ今回の第6回が最終回となり、元NHK記者、元神戸大学非常勤講師、また社訓・家訓の研究家でもある大塚 (とおる)氏が講演されましたのでご紹介します。
                                                               P1060927.JPG【大塚 融氏 講演概要】
日時 : 平成29年11月11日(土) 14:00~15:00

場所 : デザイン・クリエイティブセンター神戸(通称:KIITO) 303号室

主催 : 神戸市(みなと総局技術部計画課)

演題 : 「金子直吉と神戸高商出身者」


【大塚 融氏プロフィール】
昭和39年一橋大学経済学部卒、NHK東京報道局に記者として入局。昭和49年大阪局報道部にて関西経済界全般を担当。平成7年「NHK大阪放送局70年史」、平成17年「NHK大阪放送局80年史年表」編纂・執筆。平成12年10月~17年3月神戸大学文学部非常勤講師。平成15年「大和証券百年史」編纂・執筆。

【主な著書】
「関西商法に生きる社訓・家訓」、「日商岩井創業者・永井幸太郎伝」、「近代大阪の洋風数寄者・加賀正太郎」、「船場の職人文化とパトロン」など。 

P1060928.JPG今回の講演の主眼は、なぜ鈴木商店は大番頭・金子直吉が「天下三分の宣誓書」において「三井三菱を圧倒するか、しからざるも彼らと並んで天下を三分するか」と発するほど短期間に巨大グループに発展することができたのかを、同社が数多くの神戸高商(現・神戸大学)出身の社員を擁したという「人材」の側面から考察するものです。

まず講演会の冒頭で、大塚氏が自ら取材された「今昔倒産気質」と題したNHKニュース(昭和53(1978)年5月18日付)の映像が放映されました。このニュースでは、まず当時の倒産における経営者のモラルが昭和金融恐慌当時(昭和2(1927)年当時)の倒産事情と比べて大きく変化してきたことを伝えています。

鈴木商店の倒産(昭和2(1927)年4月)については、金子直吉が債権者に極力迷惑をかけないよう心がけたことから「きれいな倒産」とも言われたこと、また社員の再就職について経営者が親身になり最後まで面倒をみたこと、こうした姿勢が「辰己会」という鈴木商店のOB会組織がいまだに続いている理由であること、などが当時の鈴木商店のOB・ゆかりの経営者らにより語られています。

続いて大塚氏から、金子直吉の人となり、経営姿勢、金子が後世に残した遺産などについて解説され、鈴木商店に120名余の卒業生を送った神戸高商の初代校長・水島銕也(てつや)の情愛に満ちた優れた教育者としての経歴・人となり、水島の薫陶を受けた高畑誠一永井幸太郎の名コンビ、さらに落合豊一西川政一など神戸高商出身の代表的な鈴木商店の社員の経歴・人となりなどが語られました。

また、読書と学生時代の学問をその後の実務に生かすことの重要性が示され、永井が愛読した「フランクリン自伝」(アメリカの「独立宣言」の起草者の一人としても知られるベンジャミン・フランクリンの自伝)がいかに優れた著作であるかも解説されました。

当日は50名余の方の参加をいただき、参加者は同氏の時にユーモアを交えた長年の綿密な取材に裏打ちされた数々の事実・エピソード・教訓などを熱心に聞き入り、大好評でした。

※上の写真左、大塚氏が掲げているのは金子直吉直筆の高畑誠一宛書簡です。

下記の講演資料も合わせご覧下さい。

「神戸港と神戸文化の企画展」での「鈴木商店記念館」講演会は、今回の第6回をもって年内のスケジュールをすべて終了いたしました。各回の講演会とも多くの方の参加をいただき盛況裏に終えることができましたこと、参加者の皆様、講師の皆様、主催者である神戸市(みなと総局技術部計画課)の皆様ほか関係するすべての方々に改めて感謝申し上げます。

最後に、改めまして今年開催されました全6回の「鈴木商店記念館」講演会の概要を以下にご紹介します。

〇第1回 2/25(土) 14:00~15:00 齋藤尚文氏(兵庫県県立芦屋高校教諭・兵庫教育大学大学院非常勤講師、博士[学術]、当記念館協力者) 演題「神戸・台湾と鈴木商店」

〇第2回 4/8(土) 14:00~15:00 講演者:高畑 新一氏(鈴木薄荷株式会社 常務取締役、当記念館特別協力者) 演題「高畑誠一と松方幸次郎」

〇第3回 5/20(土) 14:00~15:00  講演者:小林 由佳氏(神戸新聞社 編集局経済部長) 演題「鈴木商店の軌跡に学ぶ ~現代へのメッセージ」

〇第4回 7/8(土) 14:00~15:00  講演者:小林 善彦氏(須磨歴史倶楽部理事長) 演題「お家さんと須磨の邸宅群」

〇第5回 9/9(土) 14:00~15:00  講演者:神木(かみき) 哲男氏(神戸大学名誉教授、奈良県立大学名誉教授、NPO法人神戸外国人居留地研究会理事長、当記念館特別協力者) 演題「居留地貿易と鈴木商店」

〇第6回 11/11(土) 14:00~15:00  講演者:大塚 (とおる)氏(元NHK大阪局報道部記者、元神戸大学文学部非常勤講師、経営史研究家、当記念館監修)  演題「金子直吉と神戸高商出身者」

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