「港神戸の発展に貢献した総合商社の源流・鈴木商店」講演会で、兵庫県立国際高等学校教諭の齋藤尚文氏が講演されました。

2019.10.30.

P1060658.jpg神戸市主催の「港神戸の発展に貢献した総合商社の源流・鈴木商店」第2回講演会で、当記念館の編集協力者でもある兵庫県立国際高等学校教諭の齋藤(なお)(ふみ)氏が講演されましたのでご紹介します。

P1090377 (1024x769).jpg【齋藤尚文氏 講演概要】
日時 : 令和元年10月26日(土)  14:00~15:00

場所 : 神戸ポートオアシス5階 502会議室(神戸市中央区新港町5番2号)

主催 : 神戸市(港湾局 計画部 港湾計画課)

演題 : 鈴木商店の海運事業 ~鈴木商店の船舶事業の原点・南満州汽船から帝国汽船、国際汽船、カネタツ海運まで~

【齋藤尚文氏プロフィール】
兵庫県立国際高等学校教諭、博士(学術)、史訪会会長、台湾史研究会会員、経営史学会会員、神戸外国人居留地研究会会員、鈴木商店記念館編集協力者。主に台湾をフィールドに鈴木商店の事業活動を研究。

(著書)「鈴木商店と台湾 樟脳・砂糖をめぐる人と事業」(晃洋書房、2017年)

(論文) ・「鈴木商店と台湾塩専売制度」 ・「鈴木商店の海運事業 -南満州汽船株式会社を中心に」 ・「金子直吉「天下三分の宣言書」はいつ書かれたか」 ・「鈴木商店と台湾鉄工所 -製糖機械の現地生産化をめぐって」 ・「鈴木商店で学ぶ大戦景気 -世界と日本をつなぐ地域教材の活用について」 ・「鈴木商店と台湾パイン缶詰産業 -台湾鳳梨缶詰株式会社の設立と事業」ほか

講演会は主催者である港湾局 計画部 港湾計画課・田中謙次係長の司会で始まり、齋藤氏のプロフィールと演題等が紹介されました。

kajiyamamasukiti.PNG齋藤氏の講演は、まず今年6月に中東・ホルムズ海峡で発生したケミカルタンカー・KOKUKA COURAGEOUS(コクカカレイジャス号)の襲撃事件の紹介から始まりました。

実はこのタンカーは、大正7(1918)年に鈴木商店に入社し、同社の貨物部で海運事業の要諦を学んだ梶山増吉(左の写真)が昭和22(1947)年3月に設立した国華産業(当初、國華産業海運)が運航する船舶だったのです。

※国華産業については、末尾関連資料レジュメの2~4ページをご覧下さい。

続いて、齋藤氏よりレジュメ(パワーポイント資料)に従って次の項目について解説がなされました。

P10903872(1024x769).jpg1.鈴木商店の海運事業(鈴木商店船舶部)の全体像
・明治期: 傭船(ようせん)による自社輸送
・大正2(1913)年: 南満州汽船 
・大正5(1916)年: 帝国汽船 
・大正8(1919)年: 国際汽船
・大正10(1921)年: Kライン 
・昭和3(1928)年: カネタツ海運

2.鈴木商店船舶部について

3.明治30年代からの鈴木商店の事業拡大・多角化

4.南満州汽船(大正2年1月設立)について
jyunnreisenntokaikyoutomondai.jpg・設立の背景(所有船舶の大連置籍) 
・役員・社員と所有船舶(富国丸、靖国丸、帝国丸、報国丸、建国丸) 
・事業(移民船、巡礼船)
・イギリス、オランダの汽船会社によるイスラム教徒巡礼船の独占を打破 
・南満州汽船と大洋汽船の運賃バトル
・巡礼船参入の成果 

※左の画像は、金子直吉の要請により南満州汽船の取締役に就任した海運のエキスパート・松尾小三郎の著作「巡礼船と回教徒問題」(海文堂書店、1940年)の表紙です。この表紙に掲載されているのは南満州汽船所有の巡礼船「帝国丸」の貴重な写真で、煙突にファンネルマークの「よね星」(鈴木商店の女店主・鈴木よね の名前の「米」を象ったもの)が確認できます。(末尾関連資料レジュメの12ページの拡大写真をご覧下さい)

5.鈴木商店の海運事業をめぐる状況変化

6.「天下三分の宣言書」に見える"海運"
・富国丸、靖国丸、帝国丸、報国丸、建国丸の行方
・帝国丸、報国丸の売却
・鈴木商店の新造船発注

平成28(2016)年1月30日、齋藤氏は神戸外国人居留地研究会の例会において金子直吉直筆の「天下三分の宣言書」 (当記念館では"宣誓書"と称しています)が書かれた時期について、それまでの「大正6年」に代わる新見解「大正4年」を発表されました。

当記念館はこの新見解「大正4年」を全面的に支持していますが、齋藤氏は新見解の根拠を5つ挙げており、この内2つの根拠を宣言書中の「帝国丸と報国丸の売却」および「鈴木商店の新造船発注」に関する記述(*)(下の画像ご参照)より導き出しておられます。

(*)「船舶、先の帝国丸は他に売却明年七月六十五万円にて)せり、続いて報国丸の又売らんとす」「其の代りに一万(とん)の船二ツ、五千噸一ツ、今新造中也、一番早き分にて来年八月に出来る

tannkasannbunnnosengennsyo.PNG詳細については、2016.2.6編集委員会ブログ「鈴木商店研究家・齋藤尚文氏が『金子直吉の天下三分の宣言書が書かれた時期』について研究発表されました。」をご覧下さい。

7.帝国汽船(大正5年9月設立)について
kamotusenyurimaru6787souton.PNG・設立経緯、資本関係、役員 
・鈴木商店は播磨造船所を設立し造船事業に参入 
・鈴木商店最盛期の海運事業
・社外船(日本郵船、大阪商船以外の小資本海運会社所有の船舶)の活躍
・第一次大戦後の鈴木商店の大傭船 
・海運市況の低迷による経営難
(・三井物産船舶部の経営判断)
 

※上の画像は、帝国汽船の貨物船「百合丸」(6,787総トン、播磨造船所にて建造)です。(煙突にファンネルマークの「よね星」が確認できます)[ご参考]

8.日米船鉄交換条約について
iisutansorujyaa.PNG・大正7(1918)年に締結された日米船鉄交換条約により、帝国汽船からアメリカへの提供された船舶は計5隻(内、播磨造船所で4隻建造)

※左の画像は、船鉄交換船「EASTERN SOLDIER」(イースタンソルジャー)(6,818総トン、船鉄交換契約者:帝国汽船、播磨造船所にて建造)です。


9.国際汽船(大正8年8月設立)について
tekisasumaru2.PNG・設立経緯
・規模
・運航状況
・海運市況の低迷による経営難

※左の画像は、国際汽船の設立にあたり鈴木商店から提供された帝国汽船の貨物船「テキサス丸」(6,786総トン、播磨造船所にて建造)です。[ご参考]

10.Kライン(大正10年5月結成)について
・設立経緯
・資本関係、役員 
・規模 
・海運市況の長期低迷による経営難 
・川崎汽船に引き継がれたファンネルマーク

11.その他
・最後の積極策: (ボン)(ベイ)航路・台湾航路
・台湾糖積取:  郵船・商船三井とのバトル

12.鈴木商店系列海運会社の破綻後の行方 ~まとめにかえて~
・南満州汽船、帝国汽船、国際汽船、Kラインの行方

P1090383 (1024x769).jpg当日は、あらかじめ予約を申し込まれた70名余(関係者を含む)の方の参加をいただき、参加者は齋藤氏の綿密な調査と洞察力に裏打ちされた鈴木商店の海運事業、関係する海運各社に関する解説や数々のエピソードに熱心に耳を傾け、大好評のうちに終了しました。

講演の概要については、末尾関連資料のレジュメをご覧下さい。




第3回講演会の開催について
第3回講演会は12月14日(土)14:00~15:00、小林由佳氏(神戸新聞社 論説委員)による講演(演題: 松方コレクションと鈴木商店 ~盟友の夢を支えた金子直吉~)を予定しています。

今後の講演会のお申込みにつきましては、神戸市の広報誌"KOBE"や同市のホームページの記者発表資料などをご覧下さい。

下記の関連資料、関連リンクもあわせご覧下さい。

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