辰巳会・会報「たつみ」シリーズ㉒「たつみ第22号」をご紹介します。
2021.7.2.
「たつみ第22号」は、昭和50(1975)年1月10日に発行されました。本号の表紙を飾るのは、前号・第21号に続き染織家・民芸運動家の岡村吉右衛門の"手仕事の日用品"を描く版画。会員の投稿は、やや少なくなったが、反面マスコミには鈴木商店関係の記事が目立つようになりました。
◇神鋼70年のこぼれ話(神戸製鋼外史①)
昭和49(1974)年、創立70年を迎えた神戸製鋼所では「神戸製鋼外史」として"70年のこぼれ話"を紹介している。
大正4(1915)年、脇浜海岸を埋め立て新たに"海岸工場"を建設するに当たり、古来の海岸埋め立ての際人柱を埋める風習が残っていたことから、神鋼協力会社・三輪運輸工業の創業者で田宮嘉右衛門の信頼の厚い三輪徳太郎の申し出を受け、三輪の名前を書いた人形を脇浜の海岸に沈め工事の安全を祈願した。(詳細は、下記の関連リンクをご覧ください。)
◇金融恐慌と鈴木商店倒産(読売新聞 "阪神50年"より)
昭和2(1927)年、震災手形関連法案の審議の最中に起こった取り付け騒ぎが引き金となった昭和金融恐慌の波は、阪神にも及んだ。鈴木商店の倒産という大事件がパニックを拡大した。
鈴木倒産で幻の計画となった中に"尼崎の一大商港計画"があった。絶頂期の鈴木商店・金子直吉が尼崎を神戸・大阪に匹敵する貿易基地にしようとする築港計画は、兵庫県や地元武庫川東側の大庄村の賛成もあり計画は推進するかに見えたが、隣接する尼崎町の反対や建設予算高騰により断念したという。(詳細は、下記の関連リンクをご覧ください。)
◇朝日放送 「歴史を旅する『金子直吉』評」 / サンテレビ おんな風土記 「波の音」の鈴木よね
金子直吉、お家さん・鈴木よねの二人が相次いでメディアに紹介されることになった。
1)朝日放送テレビ 「歴史を旅する『金子直吉』評」 6月2日放映
歴史を語る場合、時代の背景として人物を描くのではなく、時代の中に主人公・金直吉を置く手法により鈴木商店の歴史を通して我国近代経済の道程を鮮やかに描いたドキュメンタリーに仕上げていると評価している。
2)サンテレビ「おんな風土記~『波の音』の鈴木よね」 12月11日放映
鈴木よねの遺稿集(歌集)「波のおと」をタイトルに冠し、お家さんの人間像を浮き彫りにしようとする企画で、ゆかりの神戸・祥龍寺他でのロケ撮影のほか、女優磯村みどりと詩人君本昌久の対談で締めくくる構成。(詳細は、関連リンクをご覧ください。)
◇「シンガポールの店」森田歳一
昭和2(1927)年の鈴木商店破綻による海外支店の閉鎖のうち、シンガポール支店の最後の責任者であった筆者が、当時を振り返って投稿している。
大正6(1917)年、関西学院高商部(現・関西学院大学)第二期生で、同期生の中村勇吉氏と共に鈴木商店に入社。大正8(1919)年にシンガポールに赴任、ゴム、錫の積み出し業務や、ジャバ糖の欧米向け輸出業務を手掛けたほか、同地が交易の中継基地であったことから頻繁に往来する関係者の対応に忙しかったこと、鈴木の積み荷の輸送を担う国際汽船の船員の交代業務の後方支援を行ったなどを述懐している。(詳細は、下記の関連リンクをご覧ください。)
◇「執念の鼠 正義の牙で虚像を喰う」久琢磨
鈴木商店土佐派を自認する筆者が第一勧業銀行(当時)の行内報に載った自身の寄稿文を紹介している。
大正7(1918)年8月12日、米騒動により鈴木商店本店が焼打ちにあったが、この米騒動の2年前から某新聞社は、鈴木商店に対する糾弾を始めており、国賊鈴木商店のイメージを広めて「例の鈴木商店」として悪役鈴木商店の虚像を一般大衆に植え付けた。作家・城山三郎によれば、某新聞社の度重なる攻撃により、この虚像が一般大衆には実像になったと結論づけている。
最近の大企業告発の風潮をみると、歴史は繰り返すと感じる。国民の不満の鬱積は、スケープゴートが求められる。大企業=悪と短絡に結びつけられる。銀行は、大企業に資金を供給する故に"諸悪の根源"とされかねない。銀行の正しい実像を知らしめる働きかけが必定である。(詳細は、下記の関連リンクをご覧ください。)
鈴木商店のゴム事業のエキスパートで日沙商会で活躍した筆者は、同志社大学第一回卒業生でこの程、同大学に招かれ「主義以前の世界観」と題するスピーチを行った。
同氏によれば、世界の歴史・世界観は資本主義、社会主義、共産主義の三つの"主義"によって方向づけられるが、これらの主義に関係なく世界の歴史を方向づける動きがあると。即ち、食料の獲得、技術の進歩、自由を求める戦いという。(詳細は、下記の関連リンクをご覧ください。)
◇辰巳会だより「辰巳会10月例会」昭和49年10月15日 於テイジンホール(大阪)
辰巳会10月例会が本年5月に竣工した帝人大阪本社ビル内のテイジンホールにて開催され、100人を超える会員が集った。例会の特別企画として去る6月2日に朝日放送テレビにて放映された「歴史を旅する~金子直吉」がビデオ再上映された。
米騒動による鈴木商店焼打ちから始まる冒頭から遡り鈴木の躍進を順序よくまとめ、金子直吉の少年時代から大成までのストーリに仕上げており、随所に神戸大学・桂教授の解説が加えられている。(詳細は、下記の関連リンクをご覧ください。)