鈴木商店の創業地が神戸・栄町通4丁目と特定されました。

2024.9.10.

スクリーンショット (224).jpg総合商社の源流 鈴木商店.jpg 鈴木商店は、明治7(1874)年辰巳屋松原商店より暖簾分けにより独立し、本年は創業150年の節目の年に当たります。 鈴木商店の創業地は、永らく"神戸弁天浜"と云うのが通説でしたが、このほど「神戸栄町通4丁目」なることが特定できました。

 ◇鈴木商店の創業地は、"神戸・弁天浜"が通説

 昭和52(1977)年、神戸大学助教授(当時)桂芳男が著した「総合商社の源流 鈴木商店」の中で、鈴木商店の創業について以下のように記述されています。

 「鈴木商店は、明治7年頃、兵庫の弁天浜で先代岩治郎の個人経営のもとに新興糖商"洋糖引取商"として発足し、神戸辰巳屋カネ辰鈴木商店と称した。」

 この著書以後、鈴木商店の創業地は「神戸弁天浜」と記されるようになり、ウィキペディアでも同様な表現が一般的となっています。

 また、同書以前に出版された「柳田富士松伝」(昭和25(1950)年、白石友治著)では、"辰巳屋松原商店が兵庫弁天浜に出張所を設けたこと、そこに鈴木岩治郎が雇われた。松原恒七が病に倒れ、岩治郎がのれん分けで独立した"とあり、鈴木商店の創業地は、「弁天浜」とも取れる記述があり、"弁天浜説"の根拠ともなっていました。

 ◇「内海岸通4丁目」にて独立創業

 然しながら、松原商店はほどなく弁天浜から第二波止場(後の国産波止場)の角に移転しています。(大正12年7月7日~8月4日に神戸新聞に連載された"今昔物語"に掲載された)第二波止場(国産波止場)への移転時期は、明治5年の岩治郎の入店から明治7年の暖簾分け創業までの間と推測されます。また、この"国産波止場の角"と記された場所は、「内海岸通り4丁目」(現・乙仲通の海岸通4丁目)であることが明らかになりました。

 スクリーンショット (109).jpg神戸倶楽部沿革誌 - コピー.jpgこれを裏付ける資料として「神戸倶楽部沿革誌」(昭和13(1938)年発行)が残されています。同倶楽部は、明治19(1886)年に地元有力財界人67名によって創立された団体で、同倶楽部発起人の一人・鈴木岩治郎についての略歴が紹介されています。

 ・明治5年、当神戸港に来る。大阪松原恒七商店出張所の主任となる。

 ・明治7年、独立し右松原商店の屋号を継承することを許され、カネ辰辰巳屋と称し洋銀売買、砂糖、茶、樟脳等の貿易に従事す(内海岸通4丁目に於いて

  鈴木商店の創業は、松原商店の"国産波止場の角"即ち"内海岸通4丁目"の出張所を引き継いでスタートしたことが明らかになりました。

 「総合商社の源流 鈴木商店」の中で鈴木商店の創業地を"弁天浜"とした桂芳男が、昭和64(1989)年6月30日「幻の総合商社 鈴木商店」を著した。前書を補足・加筆したが、創業地については修正されていないものの、巻末に"金子直吉年譜"が追加されており、明治5年および明治7年の項は以下の記述があり、前記の「神戸倶楽部沿革誌」の記述内容(一部誤りあり)が引用されているようです。

 ・明治5年 先代岩治郎、大阪の豪商・辰巳屋恒七こと砂糖商・松原恒七の神戸出張所(弁天浜)に雇われる。

 ・明治7年 先代岩治郎独立して、屋号の継承を許され、*内海岸通5丁目で個人経営のもと洋糖引取商として発足し、神戸辰巳屋カネ辰鈴木商店と称した。(*内海岸通4丁目の引用誤り)

 ◇個人商店時代(創業から合名会社時代まで)の鈴木商店の場所

 明治7(1874)年の創業から明治35(1902)年の合名会社への改組を経て、明治37(1904)年栄町通3丁目への移転まで鈴木商店が拠点を置いた場所は、「栄町(通)4丁目45」であることが残されています。(大阪毎日新聞社広告および神戸又新日報広告(明治35年10月5日)

 スクリーンショット (245).jpg内海岸通4丁目.jpgこれを「閉鎖登記簿謄本」の表題部の"土地表示(地番)"および甲区欄の"住居表示"で確認できます。(明治35年7月29日)

 ・地番:神戸市栄町通4丁目18番   宅地:183坪8合4勺

 ・住居表示:神戸市栄町通4丁目45番

 さらに「旧土地台帳写し」(令和5年7月21日)、「区画整理前の地図」(昭和34年頃)および「神戸市地籍図」(明治43年)で再度確認します。

 ・地番:神戸市中央区栄町通4丁目18番-1  地積(面積):183.84坪

 ◇「内海岸通4丁目」=「海岸通4丁目」+「栄町通4丁目」

 上記の登記簿謄本、旧土地台帳写し、区画整理前の地図の地番、神戸市地積図から該当箇所は、旧内海岸通(現乙仲通)と栄町通の両通りに面する区画であることが判明しました。

 スクリーンショット (246).jpg栄町通4丁目.jpg即ち、鈴木商店の創業地・"内海岸通4丁目"は、"海岸通4丁目(現乙仲通)"と"栄町通4丁目45"を併せた区画であること、住居表示は、"栄町通4丁目45"となることが判明し、茲に鈴木商店の創業地が特定されました。

 これを現在地(地番)で確認すると、乙仲通側は、海岸通4丁目5-6の集合住宅"コンフォートTo You"の辺り、栄町通側は、栄町通4丁目2-13の不動産会社"和田興産"の別館および隣接する"損害保険会社の神戸みなと元町ビル2(栄町通4丁目2-16)の一部"に相当することが判明しました。

 

関連資料

関連リンク

TOP